日々

生活とその周辺

2020消費したもの

2020の出来事を思い出すのに苦労したから、印象に残ったものたちをメモがわりにここに残しておきます。

買ったもの→読んだもの→観たもの の順。読んだものは厳選したつもりが整理しきれなかったので長い。

 

●買ったもの(主にファッション)

  1. 春夏の服として、とっても大好きなBLACK CRANEというブランドのワンピースを買った。服を選ぶときはもちろんデザインとかもみるけれど、私は物語中毒なのでだいたいいつもブランドのHPのAboutをみてから選んでいる。BLACK CRANEは環境に配慮した服作りをしていて、生地に至るまですべての生産工程をロサンゼルスで行っているので、地元のコミュニティにも貢献しており最高。私が手にしたのは過剰な装飾はないけれど、美しいドレープが施されているもので、お気に入りのお洋服になった。
  2. 秋はSERGE de bleuというブランドのデニムを買った。これは一度はいてもらいたいのだけれど、肌触りが感動するぐらい優しい。デニムは他にAPCのものを持っていて、比較してみるとAPCをフランスパンとするとSERGEはうどんという感じ。
  3. 冬はLapuan Kankuritのショールを買った。北欧プロダクトはこざっぱりしつつテキスタイルやデザインが素敵なものが多くて服に限らず、ついつい器や照明などを眺めてしまう。ショールはとてもあたたかくて、日中のちょっとしたお出かけはだいたいこれを羽織ってすませることができています。ひざ掛けとしても活躍。届いた直後はしばらく嗅いだことのなかった獣のにおいが充満していて、手洗いしたり干したりしてにおいをとる手間がかかったのが楽しかった。
  4. お弁当生活を数年続けていて、そろそろちゃんとしたランチバッグが欲しいと思っていたものの、納得のいくものに出会うことができなかったのだけれど、ついにLand Normのミニバッグに行き当たった。嬉しすぎる保冷機能付き。
  5. わたしは今まで適当に選んだキーホルダーを鍵につける派だったのだけれど、じゃらじゃらするのがストレスだったので、Hender Schemeのキーケースを選んだ。丸っこい半円のフォルムがとてもかわいく、半年ぐらい使用しているのでそろそろ手になじんできた。

 

●読んだもの(ミーハー読者なもので…)

  1. 今年は女性作家の本が特に印象に残った気がする。まずはルシア・ベルリンの『掃除婦のための手引書』。レイモンド・カーヴァーが好きな人は絶対お気に入りになると思うのだけれど、文が短くドライで女性として日常を生きていくかなしさが淡々と書かれてあった。女友達とお茶を飲みながら静かに感想を言い合いたくなります。
  2. 一方、ミンジンリー『PACHINKO(上・下)』は確かに時代や男や社会に翻弄される女性たちが登場するのだけれど、ルシア・ベルリンの登場人物たちよりはもっと熱くて力強い感じがした。NETFLIXの「ストリートグルメを求めて」のアジア編をあわせて鑑賞すると市場の光景や食べ物を売る女性たちの生活風景がより鮮明になるのでおすすめ。あと在日コリアンたちの世代ごとのアイデンティティの持ち方の違いなどが読んでいて興味深かった。上巻読んでしまったら下巻は我慢できないので注意。
  3. 同じコリアン系の作家でいうと、柳美里『JR上野駅公園口』はホームレスが主人公なのだけれど、主人公と非ホームレスの人々の会話も視線も光景も全く交わらなくて、社会から疎外されることを文章で描くとこうなるのかという驚きがあった。もちろんその事実を受け止めないといけないのだけれど。数年前、駅前でBIG ISSUEを買ったときに私は売り手の目をみることができず、うつむいて受け取ったことを思い出したりした。
  4. もうひとつコリアン作家のチョ・ナムジュ『82年生まれ、キムジヨン』を読んだ。女であることが本当につらくなる小説で、一つ一つのエピソードは確かに私自身や近しい友人たちが経験したのとほぼ同様の出来事で読んでいてしんどかった。これは男性側はどう受け取るのだろう。映画化もされるので今よりもっといろいろな人の反応を見れるかな。
  5. 村井理子『兄の終い』は絶縁状態だった憎い兄の死後処理に行く村井さんのエッセイなのだけれど、安易に「なんだかんだ故人はいい人だったよね」ってならないところがよかった。家族だからこそ割り切れない気持ちを抱いたまま、事務的な手続きをしながら追憶したり、兄をめぐる母親との確執があったり、残された作者自身の生活を続けていく様子がリアルだった。
  6. 宮野 真生子/磯野 真穂『急に具合が悪くなる』。根治不能乳がんになった宮野さん(哲学者)と彼女を支える磯野さん(人類学者)の往復書簡。差し迫ってきた死や残された生を当事者とその親しい友人はどう受け止め、どう語るのか。二人の言葉や行動からは病に立ち向かう姿勢や、病者/健常者の関係性を考えさせられた。
  7. コロナの影響かわからないけれど、ディストピア小説が私の中では非常にあつく、マーガレット・アトウッド侍女の物語』(『誓願』はまだ読んでないからネタバレしないで)とジョージ・オーウェル1984年』を読んだ。どちらも数日間むちゃくちゃ気分が沈んだ。アトウッドが何かのインタビューで現実に女性の身に起きたこと、起きていることを元にこの小説を書いたといっていたが、小説ではなかったら受け止めきれなかったかもしれない。オーウェルのほうは人間性がどんどん剥奪されていく様、体制へ取り込まれていく様にアクチュアリティがあり、さすが古典といったところ。同じようなメッセージ性を感じた川上未映子『Golden Slumbers』のように一見ユートピアのように描くという方法もあり、このような現状の中、あわせて読んでほしい。
  8. スタニスワフ・レムソラリス』も素晴らしかった。SFってようわからんとずっと思っていたのだけれど、本著は未知と遭遇した時に人間はどう立ち向かっていくのかについて綿密に書かれていたし、世界観の設定も半端なものではなかった。SFって醜悪な宇宙人を征服するかされるかみたいな描き方をするもんだと勝手に決めつけていたところ、『ソラリス』では征服するどころか目の前にあるモノあるいは現象が何であるのかが最後までわからず人類の手に負えず、でも最後が特に印象に残った。
  9. アーサー・コナン・ドイル『シャーロックホームズ』シリーズは自粛中にNETFLIXで配信されていたBBC制作の「シャーロック」を見て読み返したりしていた。ミステリってあんまり読まないのだけど、シャーロックホームズはいつだって奇抜で鋭くて面白いね。ドラマは現代版にアレンジしてあって(ホームズ、携帯使う)原著と比較するとなお楽しめました。
  10. ピエール・ブルデューディスタンクシオン』はどうしても興味をもてなかった外科の実習中に読んでいた。ワルなので。12月のNHKEテレ番組「100分de名著」に選ばれており、毎回律義に予約&視聴をしたおかげで、よりよく理解できた気がする。読書したり、何かを視聴したりするたびに「ハビトゥス・・・」とつぶやきそうになった。

●観たもの

  1. 自宅待機でおそらくみながQBなどいそいそと仕上げていた期間、私はNETFLIXを一生懸命みていた。「ストレンジャーシングス」は80年代のアメリカ文化(服装や音楽の素晴らしいこと!)とかスティーブンキングのオマージュとかで浮かれてしまい、ホラー系ダメなのをすっかり忘れて、一日に1シーズンのペースで消化していた。さっき書いた「シャーロック」や「ストリートグルメを求めて」(アジア編、南米編)もおすすめだし、「ROMA」もぜひ観てほしい。それから「最高に素晴らしいこと」も。後者二つは言いたいことが多いのでどこかの機会でまた感想を書きます。
  2. 映画は「幸福なラザロ」が印象に残った。まず映画の光景が数年前イタリアの田舎を旅していたときに車窓からみたものと似ていて、時期も同じ夏であり、乾燥した大地やけだるげな時間、あの太陽の感じがとても懐かしかった。作品は現代の聖人の在り方を描いており、後半で田舎を離れ都市で暮らす人々の厳しい現実や、彼らの傍にいるラザロの神聖さが高まっていく様子がどこか寓話的だった。もう一つ、「スウィングキッズ」という映画をみた。最初はコミカルでげらげら笑ってるんだけど、収容所の現実から自由になれる手段だったダンスも、結局は大きなイデオロギーに利用されてしまう様があまりにも悲しくて最後は胸がつぶれました。
  3. 自粛期間中はネットの四方八方で色々な映像が無料で解禁され(ありがとう)、演劇では「スーパープレミアムソフトWバニラリッチ」(バッハと言葉と身体にくらくらする)、ミュージカルでは「ジーザスクライストスーパースター」(解釈が面白いし最後のシーンでの合唱がよい)、短編では「SKIN」(BLMを考えるうえでみておきたい)、アニメ―ションでは「霧の中のハリネズミ」(大人同士で感想を言い合いたい)がそれぞれの部門で私の一位です。

 

総括:忘れてたけど音楽は舐達磨とかLofi HipHopとかで過ぎていきました。人からみた私は優しそうにみえるそうですが、くさくさしたバイブスのときは「毎日毎日SmokeするMarijuana 俺が育ててる 俺と仲間達で育ててる」と歌ってます。本当はヒヤシンスを一人で育ててるけど。映画にしろ、本にしろ韓国のものが多い。音楽でもPeggy Gou大好きなのでコリアンカルチャーの影響はあちこちにあるね。2020は私にとって韓国の年だったのかも。みなさんはどうでしたか?よいお年を。