日々

生活とその周辺

サルデーニャ島 研究室配属とは…?

まるでピスタッキオジェラートを食らうサトゥルヌス

 

10.

My誕生日!イタリアで迎えることになるとは。

とりあえず今年の目標。

・毎日一日分の野菜を摂取すること

・自分の不機嫌を他人に押し付けないこと

・旅をすること(これは昨年同様。前回分は達成できた?)

 

朝ゴミ出しに行こうとドアを開いてびっくりした。宿の人たちからのバースデーサプライズが!風船やら装飾やらが廊下のあちこちにぶら下がっていた。嬉しすぎる。イタリア語では「誕生日おめでとう」を「一年コンプリートおめでとう」と祝うらしい。生まれたことを祝福するのもいいけど、辛いこともあっただろうに一年よく生きた!というのも、それまでの過程を認めてくる気がして好き。

さて今日も今日とて普段通り研究室へ行き、普段通り実験。学部生がいなくて先生たちのプロジェクトの一環を見学(ちょっと手伝う)。針刺し事故を起こしてしまった以外は順調にすすんだ。そして、休憩中、メールを確認すると宿のオーナーから今夜、誕生日のboat tripをしないかと打診があり、どこに行くのか、そもそもboat tripってなに?とよくわからなかったけどOKする。帰宅して昼寝した後、ボディーソープと歯磨き粉を買いにいったら、ばったり家のガレージから出てきたオーナーとはち合う。奥に膨らんだゴムボートがみえたのだけど、まさかこれではないよな…と一気に不安に。ここに8時に集合ね、と言われて別れる。ちょっとはやめに食事を済ませ、8時すぎに出発。カリアリの街に面するヨットハーバーに向かって車が進んでいき、ゴムボートのフラグが折られてひと安心。そして車から降りて彼らの後をついていく。

案内されたのは、ゴムボートと一瞬でも思ってしまったことが申し訳ないぐらい立派なセイルボートだった。キッチン、冷蔵庫、トイレ、ベッド、自動操縦器もろもろ完備。4月に手に入れたと言っていたから船内は比較的新しい。運転は普段クルージング船の運転をしている息子さん。プロに操縦してもらえるなんて。満を持してサンセット・クルージングスタート。軽食を食べつつおしゃべり。のんびり風と海を楽しむ。「研究室配属とは」と疑念が頭をよぎったけれど、すぐに忘れる。最後にはシャンパンとケーキをいただいた。

好きなことを好きなだけしてわがままに生きている人生なので、世のバランス的にわびしい誕生日を迎えても仕方ないかなーと諦めているものの、毎年家族なり友人なりに祝ってもらって、楽しく誕生日を迎えることができている。それが、今年はまさかのクルージングとは。豪華さはこれまでの誕生日で一番。これは明らかに収支があわずおかしいぞ…と考えてみたところ、前世は徳を積みすぎたチベットの高僧なんじゃないかという結論に至った。ありがとう!よくやった前世のわたし!現世であなたの徳を消費しまくります。

 

11.

暑い。本当に毎日暑い。37℃とかちょっと太陽がんばりすぎている。世界的にも猛暑のようで(?)イラン南部では50℃を超えたらしい。PhDの人が標識コーンの溶けた画像をみせてくれた。今日は学部生が誰もいなくて、ラボの人たちのプロジェクトを見学。といっても内容はデータ分析で、新しく来たソフトウェアを使いこなせず悪戦苦闘していた。彼らの会話を日本語に訳すと(たぶん)「ああすればいいんじゃないか」「こうすればいいんじゃないか」となるものの、イタリア語で議論すると身振りも声のトーンもどうしてもけんか腰にみえてしまう。本日は8割イタリア語で、取り残された悲しい思い。イタリア語しゃべれないと親密さレベルはやっぱりあげれないよなあ。

ブルーな気持ちで研究室を出ると、同期の子とばったり。今から動物飼育室に行くらしい。わたしも行きたい!といつもの例にもれず、ずうずうしく主張したらいいよ!と快諾される。そして見学が終わった後も、月曜日のラット手術見学したい!と言ったら、許可証申請してみるから結果の出る月曜日に一回来てね、となった。言ったもん勝ちである。

 

12.

だらだらと休日の朝を浪費し、11時にカリアリ着。今日は友達の友達(カリアリ大生。日本語ぺらぺら)が街案内してくれるらしい。さっそく見晴らしのよいところへ数か所連れて行ってもらう。

わたしたち以上に暑い暑いと連呼していて、私たち以上に日差しで弱まっていた。現地人のその姿をみてちょっと安心する。やっぱり、普段日中は出歩かないそうだ。さらに、昨日の夜が暑すぎたのと蚊がうるさかったのと、試験終わりのトリプルパンチで寝不足を抱えていた。日本の医学生の夏みたい。コースとしては、オープンテラスでピッツァを食べ、カフェをたしなみ、お店をひやかし、ジェラートをほおばり、ちょろっと教会をのぞいて、再びカフェでスピリッツだった。基本的にずっと話しており、イタリアに関する全般的なことから恋愛事情まで色々きけた。

彼は典型的なヨーロッパのエリートで、政治学専攻にもかかわらず、ラテン語ギリシア語もドイツ語も日本語も英語も理解できる。日本には昨年の冬に卒論のために留学していたらしい。すごいなあ。わたしもせめてイタリア語をもう少しがんばろうと思った。昼にピザをホールで間食したため、お腹がすかず夕食は抜きで就寝。明日は洗濯しなくちゃ。

 

13.

朝から本を読み、洗濯をする。日曜日のため、宿のまわりはめっちゃ静か。車がほとんど通らない。15時のバスで街まで行こうかなあ、外出するのしんどいなあ…と思っていたら、結局そのまま家にひきこもるはめに。訪問したい教会は日曜閉館だしね。窓から外の激しい日差しを眺めるだけで午後が終わる。そして朝調子のよかったネットもつながらなくなったため、もはやすることがない。ベランダに設置してあるルーターの様子を見に行ったら、相当な熱をもっていた。お前も暑さにやられたのか…。しかたないから飲み始めるかと思いきや、外気温35℃というケータイの表示をみると、買い出しに行く気力が完全になえた(そもそもお店は閉まっている)。日曜日は何もしなくてよし、というサルデーニャのメッセージだろう。余った食材で夕食を適当につくり(ツナジャガイモミルク煮好評)、就寝。英気を養ったということにしておく。

 

14.

朝ラボのボスが寝不足気味に出迎えてくれ(実際寝不足)、本日の手術の担当者が寝不足気味に説明をしてくれた(実際寝不足)。二人とも昨日の夜が暑すぎて寝れなかったらしい。わたしたちは安眠できたので、「現地の人暑さに弱い説」がさらに強化された。しかし、ラボの人の友人は昨日poetto beachというカリアリ随一のビーチ(わたしはビーチに興味がないからいまだ訪れておらず)で昼前から16時の一番暑いときに遊んでいたらしい。毎年暑さで何百人と亡くなっている国からきたインド人が、クレイジーといってたぐらいだから、この暑さの中何かをするのは相当常識はずれなんだろう。あるいは、研究職についているこの人たちは勉強しすぎて暑さの中遊び慣れてないのかもしれない。いや、遊び慣れてないイタリア人はおらんか。

器材を準備したところで、本日メインのラットの頭蓋にネジとプロッブ(王冠みたいなの)を突き刺す過程を見学。なかなか詳細には書けない感じの実験。手術中にmaroon5やその他ポップチューンが流れていて、場にそぐわない音楽とはこのことかと思う。壮大なオペラでもなんか嫌だけど。作業終了後はお昼ご飯を食べ、カリアリ市内へ。お目当ての教会は閉じていて、しかたなしにジェラッテリアを新規開拓する。しかし、なんと愛すべきピスタッキオ味なし…。どうやらヴィーガン向けのアイスクリーム屋だったぽく、ミルクを使ったピスタッキオジェラートは置いていないそうだ。残念。もう一軒いこうかなとお腹が物申していたけれど、理性で防いだ。ふてくされて散歩している途中で爆睡する猫をみかける。暑さでうだっているここ数日間のわたしみたい。

 

15.

午前中は昨日脳に装置を入れたラットの脳髄液をとる過程を見学する。本当はオキシトシンを入れたりするそうだけど、人が多すぎると実験に影響が及ぶから立ち入り禁止をくらった。そのかわり研究室の機械の説明をしてもらう。さらに来週は特別に用意したラットでデモンストレーションできるよう手配してくれた。なんていい人。午後はいつもの研究室に戻り、ラボメンバー総出でレクチャーに行く。一時間半にわたる早口英語講義で脳が途中から処理を拒絶してきたので、詳細までは分からないが、ポリフェノールとかω3、ω6を摂取したラットの実験結果を説明していた。手元には赤ワインと乳製品が体にいい、もっとサルデーニャ料理楽しもう、camu camu(ポリフェノールを多く含む南アフリカのスーパーフード)の言葉の響きがかわいいというメモしか残ってないので今読み直して絶望している。イラン人のPhDもcamu camuを気に入ったらしく、camu camu? CAMU CAMU!!!といって二人でくすくす笑っていました。オノマトペ最高。

講義の途中から始まった頭痛が自宅に帰ってからも続き、無能状態のままベットに転がっていた。熱中症?あまりにも痛かったから、頭痛薬に手を伸ばすと嘘のように効き、夜は快適に過ごすことができた。お薬最高。しかし!夜にさらなる悲劇が。Wi-Fiがつながらない、シャワーの排水が上手くいかない、ガスが出ないから続いていた家の不調がついにピークに達したのか、お湯が出なくなってしまった。気管支を収縮させながら、水浴びをする。むっちゃ寒い。なにがなくても夜のホットシャワーやで。せめて夏でよかったということにしておく。

 

16.

朝から放置プレイをいただき、今週末の予定を同期の子と相談していた。島の北部アルゲーロに遠出しようかという話になり、サルデーニャは四国ぐらいの広さなので、頑張れば(わたしは頑張れないので行くなら一泊したい)日帰りでいけるかな?と計画を立てた。日帰り厳しいかな?一日必要かな?というニュアンスで”is one day OK …?”と先生に聞いたら、「必要なら金曜から休んで向かってもいいよ!それなら2、3日いける!」という返答をもらい、やはり日本人、まだまだイタリア人の「のんびりする」という技を習得できていないのだと痛感する。

以前何気なくサルデーニャで料理教室に行ってみたいとつぶやいたところ、どうやら教授にまで話が及んでいて、研究室のみんなが色々調べてくれた。なんなら、コーヒーブレイクのときに通りがかりの知り合いを捕まえて、料理教室やっている人知らない?と声をかけまくる。おかげで、近頃すれ違ったときに、ああ!料理教室の!みたいな顔でAh∼Ciao!とあいさつされるようになってしまった。

夕食は宿から15分ぐらい歩いたところにある巨大ピザを出すお店。おいしいけど、当たり前に半分しか食べれなかった。